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(3) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)

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落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

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◆2003年11月22日AM6:35◆東京・霞ヶ関

内閣官房庁舎内の内閣情報室の出先として合同庁舎12階にある
内閣情報室分析課の室内の明かりは消えることなく24時間の
即応体制をとっている。

当直責任者である「愛原聡」参事官にとっては気が重い足取りで
皇居から見える日の出を迎えるため窓に進んだ。

警察庁出向組であるキャリア警察官にとって内閣情報室は更に
将来の地位を約束されたポストでもある。おのずと政財界の重鎮

と言われるお歴々の情報も集まるポストでもあって使い方によっては
諸刃の剣にもなる生きた情報であった。

「愛原聡」にとって順風満帆に今の地位にあった訳ではなく、
キャリア警察官ならではの人脈にも翻弄された。与党・民自党が

下野した時、政権を奪取した改進党からは官庁にポストオフの
要求が出され三大官庁と自負する警察庁にとっても時の長官を始めに
複数の幹部が退任させられたのであった。年次を重んずる官吏に

とっては入庁年次順が相手を計るものでもあって逆転のポスト配置は
絶対阻止するものであった。そんな慣行を知ってか知らずか、

「クリーンアップ日本」を公約して国民の支持を集めて政権についた
改進党政府は手始めに官庁のクリーンアップと称して年次を無視した

ポスト配分を行い渋る官吏には解任権行使を匂わせ従わせたので
あった。政権党側のブレーンも官庁に送り込まれていた。

庁内が混乱して職務にも支障が出てくるのを感じた「愛原聡」に
とって頼る綱は郷土の先輩として父親同士も親交のあった民自党
代議士に頼ったことはいたしかたなかったと今でも思っていた。

そんな思いのなか窓からは雨雲の切れ目から陽が射し始めて
外堀通りをジョギングする姿を視線で追い、
一息ついて「愛原聡」は昨晩、代議士秘書から

掛かって来た電話の内容を反芻してから机の専用電話器に配置
された各都道府県警察本部長宛ての直通回線に繋がるボタンを
震える心を抑え慎重に指先を選択してボタンを押した。

壁掛け時計の短針が7時を指していたが長針は霞んで見えなかった。

-つづく-

★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:KIYO♂
旅 乗り物 株主優待 創作小説  愛犬 ポメ吉 20210714 14歳の誕生日を迎えることなく旅立ってしまう◆20160607未だに冬眠のため不定期活動。

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