(6) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)
(1) (2) (3) (4) (5) から続き
落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編
◆2004年3月某日◆能登地区病院
「多田清吾」は病室のベッドに横たわりながら数ヶ月前の出来事が慌ただしく展開したことで
『事実は小説よりも奇なり』かと呟いて手に取った今年一月の地方紙「北陸毎朝日日新聞」社会面能登欄

タイトルに続いて記事には記憶を失った女性が周囲の温かい励ましと援助により
能登地区病院の売店で働き、日曜日には「花嫁のれん」の製作場で下仕事をし
記憶の回復を待っている記事の左側 花嫁のれん を横に微笑む女性の姿が
掲載されているのを、今日までに何回読み直したかと思い目を閉じ昨年11月に
女性と出会った、その後の経緯を反芻していた。
病院事務長「塩谷一夫」は応接室に入ってきた駐在警察官「高田外冶」に再度、説明し
今後の件について強引とも取れる話の進め方だと、横に座った「清吾」は思い
「高田外冶」の出方を待っていた。
「清吾」の思いを知ってか知らずか病院事務長「塩谷一夫」は
『ほんで、女性の身元引受人は、何かの縁の清吾さん、あんたに、たのむちゃ
わしは、身元保証人になって仕事なら病院の売店に働いてもらってもいいしな』
「清吾」は、たまりかねて口を出した
『事務長さん、まだ女性に聞きもせんで いいがんか、早すぎるわ』
『良いか悪いか、清吾さん、考えてみ~、自分が誰か分からない女性に今後の身の振り方を
決めろと言うがか、せっしょうやろ~』
病院事務長「塩谷一夫」は勢いづいて
『住む所は幸い、病院の職員寮に空き部屋があるしな』
と手に持っている扇子を扇いで言い
『で、これで、どうやろ駐在さん』
病室で妙齢の女性を現認して応接室に戻ってきた駐在警察官「高田外冶」は
事件性も無いと判断し町の福祉事務所にも相談すること、
そして、暫くは女性の住居と身辺を共に気に掛ける事を決めて腰を上げた。
駐在警察官「高田外冶」を見送った病院事務長「塩谷一夫」は
『清吾さん、ほんなら、もう一度、ベッピンさん、の病室に戻って話したことを言いに行かんか』
そして、翌日以降は病院事務長に半ば強引に連れ回される様にして行政等へ相談に日参していた
「多田清吾」は「これも何かの縁や」と今回は意識して胸の内で呟いていた。
記憶が戻らないまま全快した女性は病院事務長の積極的な「働きかけ」で病院の売店に立ち
愛想良く仕事に励んでいるが、仕事以外では口数が少なく「多田清吾」とも話す内容が限られていた。
◆和倉温泉 旅館内の休憩所◆

波の花と共に来た女性 巌門で保護 私を知りませんか のタイトルに注目した男が居る。
番組制作プロデューサー「真木猛」(まき たけし)だった。
他にもCMディレクターとして数々の仕事をこなし
CMに起用した女性が今では数々の映画やテレビドラマに
出演するほどの女優に大成させたことで業界内では
「マキに磨かれれば神木に変わる」とも揶揄されるほどのヤリ手と評判だった。
「真木猛」他のロケ隊は今年四月公開のドラマで能登半島ロケシーンのため滞在しており
撮影も終盤を迎え、数日後の打ち上げも此の地と決められたスケジュールの中、
「真木猛」はエキストラとは一線を画す役、といってもクレジットの無い端役には違いないが
話題性と美貌にも惹かれ記憶を失った女性・通称「圭子」を登場させるため彼女の身元引受人や
身元保証人に話をつけ、出演を渋る「圭子」には「自然体で」と何とか口説き落としていた。
『多田さん、こんにちは』
掛け声の下、女性が玄関戸を開けた。
『おお~圭子さん、か入りまっし』
声を聞くだけで分かった「清吾」は居間から玄関へ向かった。
『お世話下さり申し訳ありませんが 私 東京に行きます』
「圭子」の言葉は意外に思わなかった「清吾」だった。
やはりテレビのドラマが縁で東京に行ってしまうのかと予想が当たっていた。
東京行きを切り出されてからは、今度は渋る病院事務長「塩谷一夫」の身体を押すようにして
身支度と行政や制作プロデューサー「真木猛」との連絡に日々を過ごすことになり、
『清吾さん、あんた本当に人がいいな、何を企んでいるか分からない男に圭子さん、を盗られるんやぞ』
言葉尻は、かぼそく聞こえた病院事務長「塩谷一夫」は意気消沈するかのように
『わしは、反対や』
扇子の扇ぎも弱々しかった。
でも、これが覆る訳はない と「清吾」は
『今度も決めたのは圭子さん、やぞ』
(恵子の好きなようにしたら良い)
「清吾」は恵子とダブらせて圭子の活躍を願っていた。
三月に入って未だ記憶が戻らない女性「圭子」の旅立ちを待っていたかのように
今度は「清吾」が体調不良で診察してもらうと内臓(すい臓)疾患で入院することになった。
『夕食ですよ』
看護師の声で「清吾」は圭子と出会い、その後の経緯の反芻から目覚めた。
--つづく--
★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。
落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編
◆2004年3月某日◆能登地区病院
「多田清吾」は病室のベッドに横たわりながら数ヶ月前の出来事が慌ただしく展開したことで
『事実は小説よりも奇なり』かと呟いて手に取った今年一月の地方紙「北陸毎朝日日新聞」社会面能登欄

タイトルに続いて記事には記憶を失った女性が周囲の温かい励ましと援助により
能登地区病院の売店で働き、日曜日には「花嫁のれん」の製作場で下仕事をし
記憶の回復を待っている記事の左側 花嫁のれん を横に微笑む女性の姿が
掲載されているのを、今日までに何回読み直したかと思い目を閉じ昨年11月に
女性と出会った、その後の経緯を反芻していた。
病院事務長「塩谷一夫」は応接室に入ってきた駐在警察官「高田外冶」に再度、説明し
今後の件について強引とも取れる話の進め方だと、横に座った「清吾」は思い
「高田外冶」の出方を待っていた。
「清吾」の思いを知ってか知らずか病院事務長「塩谷一夫」は
『ほんで、女性の身元引受人は、何かの縁の清吾さん、あんたに、たのむちゃ
わしは、身元保証人になって仕事なら病院の売店に働いてもらってもいいしな』
「清吾」は、たまりかねて口を出した
『事務長さん、まだ女性に聞きもせんで いいがんか、早すぎるわ』
『良いか悪いか、清吾さん、考えてみ~、自分が誰か分からない女性に今後の身の振り方を
決めろと言うがか、せっしょうやろ~』
病院事務長「塩谷一夫」は勢いづいて
『住む所は幸い、病院の職員寮に空き部屋があるしな』
と手に持っている扇子を扇いで言い
『で、これで、どうやろ駐在さん』
病室で妙齢の女性を現認して応接室に戻ってきた駐在警察官「高田外冶」は
事件性も無いと判断し町の福祉事務所にも相談すること、
そして、暫くは女性の住居と身辺を共に気に掛ける事を決めて腰を上げた。
駐在警察官「高田外冶」を見送った病院事務長「塩谷一夫」は
『清吾さん、ほんなら、もう一度、ベッピンさん、の病室に戻って話したことを言いに行かんか』
そして、翌日以降は病院事務長に半ば強引に連れ回される様にして行政等へ相談に日参していた
「多田清吾」は「これも何かの縁や」と今回は意識して胸の内で呟いていた。
記憶が戻らないまま全快した女性は病院事務長の積極的な「働きかけ」で病院の売店に立ち
愛想良く仕事に励んでいるが、仕事以外では口数が少なく「多田清吾」とも話す内容が限られていた。
◆和倉温泉 旅館内の休憩所◆

波の花と共に来た女性 巌門で保護 私を知りませんか のタイトルに注目した男が居る。
番組制作プロデューサー「真木猛」(まき たけし)だった。
他にもCMディレクターとして数々の仕事をこなし
CMに起用した女性が今では数々の映画やテレビドラマに
出演するほどの女優に大成させたことで業界内では
「マキに磨かれれば神木に変わる」とも揶揄されるほどのヤリ手と評判だった。
「真木猛」他のロケ隊は今年四月公開のドラマで能登半島ロケシーンのため滞在しており
撮影も終盤を迎え、数日後の打ち上げも此の地と決められたスケジュールの中、
「真木猛」はエキストラとは一線を画す役、といってもクレジットの無い端役には違いないが
話題性と美貌にも惹かれ記憶を失った女性・通称「圭子」を登場させるため彼女の身元引受人や
身元保証人に話をつけ、出演を渋る「圭子」には「自然体で」と何とか口説き落としていた。
『多田さん、こんにちは』
掛け声の下、女性が玄関戸を開けた。
『おお~圭子さん、か入りまっし』
声を聞くだけで分かった「清吾」は居間から玄関へ向かった。
『お世話下さり申し訳ありませんが 私 東京に行きます』
「圭子」の言葉は意外に思わなかった「清吾」だった。
やはりテレビのドラマが縁で東京に行ってしまうのかと予想が当たっていた。
東京行きを切り出されてからは、今度は渋る病院事務長「塩谷一夫」の身体を押すようにして
身支度と行政や制作プロデューサー「真木猛」との連絡に日々を過ごすことになり、
『清吾さん、あんた本当に人がいいな、何を企んでいるか分からない男に圭子さん、を盗られるんやぞ』
言葉尻は、かぼそく聞こえた病院事務長「塩谷一夫」は意気消沈するかのように
『わしは、反対や』
扇子の扇ぎも弱々しかった。
でも、これが覆る訳はない と「清吾」は
『今度も決めたのは圭子さん、やぞ』
(恵子の好きなようにしたら良い)
「清吾」は恵子とダブらせて圭子の活躍を願っていた。
三月に入って未だ記憶が戻らない女性「圭子」の旅立ちを待っていたかのように
今度は「清吾」が体調不良で診察してもらうと内臓(すい臓)疾患で入院することになった。
『夕食ですよ』
看護師の声で「清吾」は圭子と出会い、その後の経緯の反芻から目覚めた。
--つづく--
★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。
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