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(10 ) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)

(9) から続き


落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

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◆2004年8月下旬 8:20◆金沢・鞍月 県警本部

田所真一 は県警独身寮から徒歩とバスを乗り継いで県警本部庁舎内で本部長面会室控え室
へ向かうためエレベーター前に来ると丁度降りて来たエレベーターのドアが開き

パンフレットを胸まで抱えた制服姿の女性が出て来て危うく ぶつかりそうになった。
「あ おはようございます 田所さん この前は お疲れ様でした」

「おっと 松本さん じゃないですか これから どこに」



松本 妙子(まつもと たえこ)とは「初任科生」と警察学校で呼ばれる警察官採用同期生で
年齢は「田所真一」が四歳年上であり「初任科短期生」として九月卒業(長期生は翌年一月)し 
ていたが旧盆を利用して何とか勤務のやり繰りをして初任科同期生の半分には満たなかったが

警察学校卒業から約四年ぶりに同期会を催し旧交を温め直す機会を利用して 松本 妙子 とも
知り合いになっていた。

「初任科生」といっても同期の数も多く女性だった松本とも特に印象として
残っている訳ではなく同期会で警察学校卒業してから改めて存在を知った感じだった。

繁華街の居酒屋の二室を一部屋にしての同期会は久しぶりの再会だった為か話も弾み
年齢相当の青年達の楽しい憩いの場になっていて 場を変えての二次会では 松本 妙子 が
いつしか 田所真一 の傍を離れずに歌声や身振りで他の同期生達と楽しそうな様子だった。

田所真一 は松本も私服や化粧をすると 見違えたな と思っていると心を見透かされたのか
「こら しんいち君 その視線は セ ・ ク ・  ハ ・  ラ ・  セクハラ よ」

天井から吊るされた4色回転灯の照明光を顔に受けた松本の瞳は輝き潤んで見え
ドキッとした  田所真一 は

「しんいち君って・・・。 その声は・・・。 お前は 毛利 蘭(もうり らん) か」
意味が通じたのか 松本は笑い声を上げながら 田所真一 の右肩を何度も触れてきた。

二次会も二時間を経過する内に途中から退席する者も現われ 次の再会を約束して散り始めて
お開きの声を幹事役が上げて 関東一本締め で解散となった。

田所真一 は二次会で最後まで居た独身寮二名と声を掛け合い繁華街のタクシー乗り場に
向かうと 松本も帰宅方向が同じだからと声を掛けられた 田所真一 はタクシー後部シート

中央に座り左側には先にタクシーから降りる 松本 妙子 が座り 助手席に座った同期生が
シートベルトを着けると後部シートの三名も慌ててシートベルトを着ける動作を始めた

「シートベルト せんでも」
言いながら振り返って後部シートを見るタクシー運転手に

「いや 本官は・・・。」
言い止んだ助手席に座った 秋山に

「で・・・。日本国憲法 法令 条例その他の諸法規を忠実に擁護し命令を遵守し」
後部シート右側に座った 川辺が「宣誓」を発して笑ったので タクシー運転手を除いて
車内が笑い声に包まれた。

松本 妙子 が タクシー運転手に降車の声を掛けてドアを開けてもらい 同期生達と
別れの挨拶をしながら身を捻って降りようとした時に松本の右手が伸びて 田所真一 の左手

と触れたのが分かったが何事も無いような素振りで降りて行った。

松本 妙子 が降りた所は山手の高台らしく市内の夜景が輝かしく見えたが街路灯の明かり
だけでは寂しい感がした 田所真一 は

「大丈夫かな・・・。」
呟きが聞こえたのか隣の 川辺からは 松本は柔道の有段者だと教えてもらい

助手席に座った 秋山からは
「知ってるか 松本の一番下の妹が中一なんだが 柔道の県強化選手に指定されたんだって」

初耳の 田所真一 は
「凄いな 将来が楽しみだな ひょっとして オリンピック選手になってメダル獲得かもね」

今 アテネ・オリンピックでは女子柔道も金メダルラッシュだからと景気良く打ち上げた想いだった

タクシー運転手の存在を意識しながら同期生達と取り留めない会話をしながら独身寮へ到着してから
明日の身支度等を整えて眠りに付く 田所真一 には 松本 妙子 が意識する存在になっていた。




「これから 交通企画課と合同の「慰問」に夏休みを利用した交通講話で市内の小学校へ行く準備よ」
春に本部の少年課に異動になっていた 松本 妙子 は「声かけ事案」の発生マップが描かれた

パンフレットの束を見せて笑い掛けて来たが途中で止まり 田所真一 越しに何かを確認したのか
視線を外し会釈して慌てるように車庫へ向かう後姿を視線で追うと

「真一君 ドア閉まるぞ 朝から暑いな エアコン効いているか」
田所真一 に声を掛けたのは 相棒で先輩の 渡辺達司 だった

「先輩 何 言っているんですか まだ朝ですよ それに 経費削減ですから 尚更ですよ」
なぜか 狼狽してしまう 田所真一 だった。

--つづく--

★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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KIYO♂

Author:KIYO♂
旅 乗り物 株主優待 創作小説  愛犬 ポメ吉 20210714 14歳の誕生日を迎えることなく旅立ってしまう◆20160607未だに冬眠のため不定期活動。

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