(5) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)
(1) (2) (3) (4) から続き
落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

◆2003年11月22日 9:00◆巌門駐在所
駐在所の電話の着信音が鳴った。
定年まで後、幾年の「高田外冶」(たかだ そとじ)にとって二度目の初赴任地は
生まれ故郷に近い駐在所勤務は都落ちの寂しさよりも嬉しさが勝った。
勇壮な秋祭りを催す地区と大漁旗を掲げた漁船が係留する活気ある港、
観光客も訪れる景勝地巌門も管轄下のため
何かと忙しく勤務する「高田外冶」は新任の歳若い本部長が行幸に訪れる
機会にも恵まれての晴れがましさもあり電話の着信音が鳴っても心踊った。
受話器の耳元からは困りかけた感を匂わす病院事務長「塩谷一夫」
(しおたに かずお)の話が長話になりそうなので途中で折った「高田外冶」は
『今すぐ、そっちに行くから細かい事は、その時やから待っとらな』
病院事務長「塩谷一夫」とは磯釣り仲間で幾度と非番時の夜間に連れ立って
日本海へ小船で繰り出した時でも絶えず喋り声を発し
愉快でもあったが時として雑音も発し気分を害すこともあった「高田外冶」だったが
聞き役に徹する事も多々あって先程の病院事務長「塩谷一夫」の要件を反芻しながら
パトカーのハンドルを握っていた。
『駐在さん、今、気になる患者が運ばれて来てな』
『おう、事務長さんか、景気はどうや』
互いに氏名を名乗らなくても分る間柄なためか肩肘張らない会話となっていた。
『季節柄か入院する患者が多くてな空ベッドを無理やり作って奇麗な娘を入院させたがや』
『それで何か問題でも起こしたんか』
『ほれ、駐在さんも知っている多田が早朝に巌門で倒れていた娘を運んで来たんや』
『ほお、多田さんがか』
これまた幼馴染の名前を久しぶりに聞いた。娘の恵子さんの行方不明者届が出てから
一緒に心当たりを捜したが手掛かりも掴むことは出来きず
「高田外冶」は慰め役にもなっていた。
『最初は帰ってきた娘さんを連れて来たのかと思ったんだが』
『違うのだったら、誰やろ』
『駐在さん、ワシは何時の間にコレが、それにな』
声からでも受話器の向うで事務長が小指を立てている姿を想像できた「高田外冶」だった。
今の時季、巌門や「ヤセの断崖」に来る者の中には訳有りもと、予断を持つつもりもないが
駐在所勤務としての勘もあった。
--つづく--
★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。
落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

◆2003年11月22日 9:00◆巌門駐在所
駐在所の電話の着信音が鳴った。
定年まで後、幾年の「高田外冶」(たかだ そとじ)にとって二度目の初赴任地は
生まれ故郷に近い駐在所勤務は都落ちの寂しさよりも嬉しさが勝った。
勇壮な秋祭りを催す地区と大漁旗を掲げた漁船が係留する活気ある港、
観光客も訪れる景勝地巌門も管轄下のため
何かと忙しく勤務する「高田外冶」は新任の歳若い本部長が行幸に訪れる
機会にも恵まれての晴れがましさもあり電話の着信音が鳴っても心踊った。
受話器の耳元からは困りかけた感を匂わす病院事務長「塩谷一夫」
(しおたに かずお)の話が長話になりそうなので途中で折った「高田外冶」は
『今すぐ、そっちに行くから細かい事は、その時やから待っとらな』
病院事務長「塩谷一夫」とは磯釣り仲間で幾度と非番時の夜間に連れ立って
日本海へ小船で繰り出した時でも絶えず喋り声を発し
愉快でもあったが時として雑音も発し気分を害すこともあった「高田外冶」だったが
聞き役に徹する事も多々あって先程の病院事務長「塩谷一夫」の要件を反芻しながら
パトカーのハンドルを握っていた。
『駐在さん、今、気になる患者が運ばれて来てな』
『おう、事務長さんか、景気はどうや』
互いに氏名を名乗らなくても分る間柄なためか肩肘張らない会話となっていた。
『季節柄か入院する患者が多くてな空ベッドを無理やり作って奇麗な娘を入院させたがや』
『それで何か問題でも起こしたんか』
『ほれ、駐在さんも知っている多田が早朝に巌門で倒れていた娘を運んで来たんや』
『ほお、多田さんがか』
これまた幼馴染の名前を久しぶりに聞いた。娘の恵子さんの行方不明者届が出てから
一緒に心当たりを捜したが手掛かりも掴むことは出来きず
「高田外冶」は慰め役にもなっていた。
『最初は帰ってきた娘さんを連れて来たのかと思ったんだが』
『違うのだったら、誰やろ』
『駐在さん、ワシは何時の間にコレが、それにな』
声からでも受話器の向うで事務長が小指を立てている姿を想像できた「高田外冶」だった。
今の時季、巌門や「ヤセの断崖」に来る者の中には訳有りもと、予断を持つつもりもないが
駐在所勤務としての勘もあった。
--つづく--
★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。
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