宅配サービス見直し face to face
2080年 足立区 某所から中継
「現場の小川さん そちらからリポートお願います」
「はい こちら 閑静な住宅が建ち並ぶ一般庶民地区の相原聡さん宅前では大勢の報道陣が
詰め掛けて今か今かと御配達使者様の到着に向けてカメラ設置を行っています」
俺は身震いしながら興奮を抑えらず良い香りを漂わせる若い女性リポーターの横に立った
「今 こちらに居りますのが 年に一度の栄華に当選され特殊サービスを受ける相原聡さんです
まずは ご当選おめでとうございます! 今のお気持ちをお聞かせ下さい」
俺は心地良い香りの堪能から無理やり気持ちを離し
「静岡のオフクロ~ VR(仮想現実)テレビで俺の姿を触れるか~ 当選したずら~」
俺は言葉を終えるや否や VRテレビ用カメラに向かって股間を開き両膝を曲げ腰を下げ両手で鼠蹊部
を上下させ コマネチ コマネチ* と言葉を発し名誉区民栄誉賞を受賞された大御所の真似をした。
(*今から約百年前に流行ったポーズが一世紀を経て巷でリバイバルヒットしている)
俺は これでテレビスタジオの解説委員達も和んだろうと思ったが現場スタッフ達の意図と
反していたのか女性リポーターは一瞬 きつい横顔から笑顔に戻し
「今か今かと御配達使者様の到着を前に緊張感が増している相原聡さん宅前から
スタジオの桜井さんに一旦 中継を御返します 現場の小川でした」
俺は心地良い香りを発する 女性リポーターが俺から離れる時の舌打ちを聞き逃さなかった
まるで素人は 素人で いろ とオーラを発し現場スタッフ達の輪の内に入って頷いてる姿と
時折振り返り俺を憐みしている視線を感じても能天気に俺の勘違いだろうと思うようにしたが
日本の総人口* が一世紀を経て大台を割って久しく俺の曽祖父が言っていたマスコミ関係者の
(*2065年 8808万人)
選民意識が今の時代で更に増していると思っている。
-つづく-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
-つづき-
■サイン ください
御配達使者様が到着時刻の15時に近づく頃には既に年に一度いや初の光景を目に焼き付けよう
と慶事を聞きつけた付近住民たちも含めて閑静な住宅が建ち並ぶ一般庶民地区にしては賑わい始め
普段なら無人自動運転トラックや乗客を乗せた無人自動運転タクシーが行き交う環七通りからの
迂回路として利用もされている車道は交通規制が既に始まているのか見かけなくなり代わりに人混み
を整理するAI ロボットポリス(しきり君)が多数現れローラー歩行時の発生音を響かせながら稼働する
のを見て儀式開始が迫ることを実感し儀式の意義と所作を事前に日本国政府関係者から教示されて
いる相原聡であった。
一区画先の二丁目との境界となる住居ブロック塀越しから蹄の音が聞こえてくると相原聡宅周辺に
集う面々の会話も止み静寂に包まれると陽光を浴び濃い紅色が映える儀装馬車(着任した外国大使
が信任状捧呈式のため使用する)を模した馬車(手動技能最高運転士が手綱を操る)が姿を現すと
俺は玄関前に立ち道路中央まで敷かれた赤絨毯を臨み横付けされる馬車の
到着を早やる気持ちを抑えて御配達使者様を待った。
濃い紅色が映える馬車が道路中央まで敷かれた赤絨毯の先に横付けされると何処からともなく
雅楽の調べが聞こえ始め馬車の扉が開き御配達使者様が中から姿を現し降り立った。
「ソンセンニム サマ」
俺は唱えると正座してから頭を垂れたまま両肘で両脇を閉め両てのひらを上にして左右側頭部に
添えたまま再度深く頭を垂れ
「ソンセンニム サマ」
再度唱えて最高の受領姿を示してから解除し立ち上がる。
俺は初めて生で見る御配達使者様を纏う凛々しき着衣に目を奪われ素直に
「最高です!」
と予定外の声を発してしまったが周囲から どよめきが起こると賛同の拍手も得られたようで安心した。
今や貴重な衣装となり見かけることも無くなり専門機関で代々丁寧に修理保管され受け継がれてきた
御配達使者様を纏う着衣は所々に薄くなった油染みが点在する白色の衣装は21世紀初頭までは
作業服【つなぎ】と呼ばれている衣服であった。
赤絨毯を小脇に段ボール箱を抱え力強く歩き近づき遂に俺と対面すると御配達使者様は お言葉を発した
「サイン ください」
-つづく-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
-つづき-
■face to face
御配達使者様のお言葉に反応し相原聡の前面右側空間に突如現れた3Dホログラフィー機(拇印君)に
向かって宅配品受取の証として俺は右手親指を突き立て指紋を付けた。
「操作 指紋 認証 確認 いたしました」
と発しながら3Dホログラフィー機(拇印君)は縮小し空間に吸い込まれて行く。
俺は自称 宅配当選マニアの一人だと思っている 日本が世界に誇れる物流システムの権化が
人的交流物流システム「宅配便」なのである。
21世紀初頭には宅配量の膨大に反比例するように配達員の人員確保が儘ならず宅配サービス見直し
が宅配業界大手の宣言により他社も続き運賃も値上げされ利用者も宅配享受の再確認の機会とも
なったが根本的な「宅配便」を担う配達員の減少傾向は日本の人口減少と付随して進むのである。
俺の曽祖父は でもしか先生 だったと父親から聞かされていた デモしかしない と言う意味ではない
魅力的な就職先の採用には自信がないが教員でもと採用され積極的な就職活動の面倒を避ける
ために公立校教員となった。そして祖父は親の背中を追うことなく治安維持の最前線 社会正義の
守護者として警察官の道へ。教員 警官と続いた家系で父は公務員系の重圧に負けてしまったのか
民間食品会社正社員(事務職)へと進み俺には何度も平凡な人生が一番だ でも正社員になれと言う
口癖に俺は閉口する。
俺は誰もが正社員だった時代は知らないが人件費抑制から来る非正規雇用の弊害は確実に労働者
に疲弊を与え未来の展望が開かれない社会となっていると21世紀初頭から叫ばれていたのに当時の
労働者の意識の一片に気ままに働き束縛されず自由を謳歌しても働く場は有ると思う若者も居たこと
は事実だったと思っている。
俺の持っている電子辞書の21世紀初頭項には 3K (きつい汚い危険) 新3K (給与休暇希望)と綴られ
働き方の改革として挙げられている。当時の経済状況は不況から好景気の端境期で就職難の時に
門戸が大きく開かれていた人的サービス業で高齢者増加による介護士・ヘルパーや接客サービスの
飲食系そして物流サービスの貨物・宅配運転手へ薄給でも糧を得るために不承ながら就く者も
大勢いて当時と違うのは俺の今の時代は人的サービス者の社会的地位は高い
と認識されているのは人口減を補うかのように人的から機械的に単純労働*は置き換えられていた中
(*製造現場に止まらず高度な判断作業と思われた証券業界でもトレーダー・ストラテジスト等はAI が担う)
富裕層は見栄を競うように大金を払ってでも人的交流物流システム「宅配便」を利用することになり
日本国政府は健全な人的交流物流の保護として貧富を問わず宅配サービスの受領者を政府所管の抽選制
を施行し末代まで今やface to faceが最高芸として無形民俗伝統芸として人的交流物流システム「宅配便」を映像記録する部署が文化庁無形民俗伝統芸「宅配便」保存課であり俺が当選した慶事も所掌する。
「ありがとうございました」
と感謝の言葉で俺は御配達使者様から当選した宅配サービスの注文品(日用雑貨)を詰めた段ボール箱を
受取ると無形民俗伝統芸の終幕を告げる祝砲の花火音が手動式打ち上げ花火最高技能士の動作
を経て足立区上空へ解き放たれ西日を浴びて反射する無数の連なる小型無人自動飛行運搬機(ドローン君)
の航路へ届いたかのように各家庭を目指し宅配便(ドローン君)が花火の軌跡を描くように散って行く。
(よし 今度は 御配達使者様 役で当選めざし 応募しよう)
と胸の内で呟く 相原聡 であった。
【資料】 21世紀初頭に於ける手動運転式化石燃料内燃機関を用いる有人宅配車(イメージ図)

所蔵 22世紀物流効率化協議会 発行 機関誌【face to faceで最高の笑顔】より(イメージ図)抜粋
-おわり-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
「現場の小川さん そちらからリポートお願います」
「はい こちら 閑静な住宅が建ち並ぶ一般庶民地区の相原聡さん宅前では大勢の報道陣が
詰め掛けて今か今かと御配達使者様の到着に向けてカメラ設置を行っています」
俺は身震いしながら興奮を抑えらず良い香りを漂わせる若い女性リポーターの横に立った
「今 こちらに居りますのが 年に一度の栄華に当選され特殊サービスを受ける相原聡さんです
まずは ご当選おめでとうございます! 今のお気持ちをお聞かせ下さい」
俺は心地良い香りの堪能から無理やり気持ちを離し
「静岡のオフクロ~ VR(仮想現実)テレビで俺の姿を触れるか~ 当選したずら~」
俺は言葉を終えるや否や VRテレビ用カメラに向かって股間を開き両膝を曲げ腰を下げ両手で鼠蹊部
を上下させ コマネチ コマネチ* と言葉を発し名誉区民栄誉賞を受賞された大御所の真似をした。
(*今から約百年前に流行ったポーズが一世紀を経て巷でリバイバルヒットしている)
俺は これでテレビスタジオの解説委員達も和んだろうと思ったが現場スタッフ達の意図と
反していたのか女性リポーターは一瞬 きつい横顔から笑顔に戻し
「今か今かと御配達使者様の到着を前に緊張感が増している相原聡さん宅前から
スタジオの桜井さんに一旦 中継を御返します 現場の小川でした」
俺は心地良い香りを発する 女性リポーターが俺から離れる時の舌打ちを聞き逃さなかった
まるで素人は 素人で いろ とオーラを発し現場スタッフ達の輪の内に入って頷いてる姿と
時折振り返り俺を憐みしている視線を感じても能天気に俺の勘違いだろうと思うようにしたが
日本の総人口* が一世紀を経て大台を割って久しく俺の曽祖父が言っていたマスコミ関係者の
(*2065年 8808万人)
選民意識が今の時代で更に増していると思っている。
-つづく-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
-つづき-
■サイン ください
御配達使者様が到着時刻の15時に近づく頃には既に年に一度いや初の光景を目に焼き付けよう
と慶事を聞きつけた付近住民たちも含めて閑静な住宅が建ち並ぶ一般庶民地区にしては賑わい始め
普段なら無人自動運転トラックや乗客を乗せた無人自動運転タクシーが行き交う環七通りからの
迂回路として利用もされている車道は交通規制が既に始まているのか見かけなくなり代わりに人混み
を整理するAI ロボットポリス(しきり君)が多数現れローラー歩行時の発生音を響かせながら稼働する
のを見て儀式開始が迫ることを実感し儀式の意義と所作を事前に日本国政府関係者から教示されて
いる相原聡であった。
一区画先の二丁目との境界となる住居ブロック塀越しから蹄の音が聞こえてくると相原聡宅周辺に
集う面々の会話も止み静寂に包まれると陽光を浴び濃い紅色が映える儀装馬車(着任した外国大使
が信任状捧呈式のため使用する)を模した馬車(手動技能最高運転士が手綱を操る)が姿を現すと
俺は玄関前に立ち道路中央まで敷かれた赤絨毯を臨み横付けされる馬車の
到着を早やる気持ちを抑えて御配達使者様を待った。
濃い紅色が映える馬車が道路中央まで敷かれた赤絨毯の先に横付けされると何処からともなく
雅楽の調べが聞こえ始め馬車の扉が開き御配達使者様が中から姿を現し降り立った。
「ソンセンニム サマ」
俺は唱えると正座してから頭を垂れたまま両肘で両脇を閉め両てのひらを上にして左右側頭部に
添えたまま再度深く頭を垂れ
「ソンセンニム サマ」
再度唱えて最高の受領姿を示してから解除し立ち上がる。
俺は初めて生で見る御配達使者様を纏う凛々しき着衣に目を奪われ素直に
「最高です!」
と予定外の声を発してしまったが周囲から どよめきが起こると賛同の拍手も得られたようで安心した。
今や貴重な衣装となり見かけることも無くなり専門機関で代々丁寧に修理保管され受け継がれてきた
御配達使者様を纏う着衣は所々に薄くなった油染みが点在する白色の衣装は21世紀初頭までは
作業服【つなぎ】と呼ばれている衣服であった。
赤絨毯を小脇に段ボール箱を抱え力強く歩き近づき遂に俺と対面すると御配達使者様は お言葉を発した
「サイン ください」
-つづく-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
-つづき-
■face to face
御配達使者様のお言葉に反応し相原聡の前面右側空間に突如現れた3Dホログラフィー機(拇印君)に
向かって宅配品受取の証として俺は右手親指を突き立て指紋を付けた。
「操作 指紋 認証 確認 いたしました」
と発しながら3Dホログラフィー機(拇印君)は縮小し空間に吸い込まれて行く。
俺は自称 宅配当選マニアの一人だと思っている 日本が世界に誇れる物流システムの権化が
人的交流物流システム「宅配便」なのである。
21世紀初頭には宅配量の膨大に反比例するように配達員の人員確保が儘ならず宅配サービス見直し
が宅配業界大手の宣言により他社も続き運賃も値上げされ利用者も宅配享受の再確認の機会とも
なったが根本的な「宅配便」を担う配達員の減少傾向は日本の人口減少と付随して進むのである。
俺の曽祖父は でもしか先生 だったと父親から聞かされていた デモしかしない と言う意味ではない
魅力的な就職先の採用には自信がないが教員でもと採用され積極的な就職活動の面倒を避ける
ために公立校教員となった。そして祖父は親の背中を追うことなく治安維持の最前線 社会正義の
守護者として警察官の道へ。教員 警官と続いた家系で父は公務員系の重圧に負けてしまったのか
民間食品会社正社員(事務職)へと進み俺には何度も平凡な人生が一番だ でも正社員になれと言う
口癖に俺は閉口する。
俺は誰もが正社員だった時代は知らないが人件費抑制から来る非正規雇用の弊害は確実に労働者
に疲弊を与え未来の展望が開かれない社会となっていると21世紀初頭から叫ばれていたのに当時の
労働者の意識の一片に気ままに働き束縛されず自由を謳歌しても働く場は有ると思う若者も居たこと
は事実だったと思っている。
俺の持っている電子辞書の21世紀初頭項には 3K (きつい汚い危険) 新3K (給与休暇希望)と綴られ
働き方の改革として挙げられている。当時の経済状況は不況から好景気の端境期で就職難の時に
門戸が大きく開かれていた人的サービス業で高齢者増加による介護士・ヘルパーや接客サービスの
飲食系そして物流サービスの貨物・宅配運転手へ薄給でも糧を得るために不承ながら就く者も
大勢いて当時と違うのは俺の今の時代は人的サービス者の社会的地位は高い
と認識されているのは人口減を補うかのように人的から機械的に単純労働*は置き換えられていた中
(*製造現場に止まらず高度な判断作業と思われた証券業界でもトレーダー・ストラテジスト等はAI が担う)
富裕層は見栄を競うように大金を払ってでも人的交流物流システム「宅配便」を利用することになり
日本国政府は健全な人的交流物流の保護として貧富を問わず宅配サービスの受領者を政府所管の抽選制
を施行し末代まで今やface to faceが最高芸として無形民俗伝統芸として人的交流物流システム「宅配便」を映像記録する部署が文化庁無形民俗伝統芸「宅配便」保存課であり俺が当選した慶事も所掌する。
「ありがとうございました」
と感謝の言葉で俺は御配達使者様から当選した宅配サービスの注文品(日用雑貨)を詰めた段ボール箱を
受取ると無形民俗伝統芸の終幕を告げる祝砲の花火音が手動式打ち上げ花火最高技能士の動作
を経て足立区上空へ解き放たれ西日を浴びて反射する無数の連なる小型無人自動飛行運搬機(ドローン君)
の航路へ届いたかのように各家庭を目指し宅配便(ドローン君)が花火の軌跡を描くように散って行く。
(よし 今度は 御配達使者様 役で当選めざし 応募しよう)
と胸の内で呟く 相原聡 であった。
【資料】 21世紀初頭に於ける手動運転式化石燃料内燃機関を用いる有人宅配車(イメージ図)

所蔵 22世紀物流効率化協議会 発行 機関誌【face to faceで最高の笑顔】より(イメージ図)抜粋
-おわり-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
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