宅配サービス見直し face to face

2080年 足立区 某所から中継

「現場の小川さん そちらからリポートお願います」

「はい こちら 閑静な住宅が建ち並ぶ一般庶民地区の相原聡さん宅前では大勢の報道陣が
詰め掛けて今か今かと御配達使者様の到着に向けてカメラ設置を行っています」

俺は身震いしながら興奮を抑えらず良い香りを漂わせる若い女性リポーターの横に立った

「今 こちらに居りますのが 年に一度の栄華に当選され特殊サービスを受ける相原聡さんです
まずは ご当選おめでとうございます! 今のお気持ちをお聞かせ下さい」 

俺は心地良い香りの堪能から無理やり気持ちを離し
静岡のオフクロ~ VR(仮想現実)テレビで俺の姿を触れるか~ 当選したずら~

俺は言葉を終えるや否や VRテレビ用カメラに向かって股間を開き両膝を曲げ腰を下げ両手で鼠蹊部
を上下させ コマネチ コマネチ* と言葉を発し名誉区民栄誉賞を受賞された大御所の真似をした。
(*今から約百年前に流行ったポーズが一世紀を経て巷でリバイバルヒットしている)

俺は これでテレビスタジオの解説委員達も和んだろうと思ったが現場スタッフ達の意図と
反していたのか女性リポーターは一瞬 きつい横顔から笑顔に戻し

「今か今かと御配達使者様の到着を前に緊張感が増している相原聡さん宅前から
スタジオの桜井さんに一旦 中継を御返します 現場の小川でした」

俺は心地良い香りを発する 女性リポーターが俺から離れる時の舌打ちを聞き逃さなかった
まるで素人は 素人で いろ とオーラを発し現場スタッフ達の輪の内に入って頷いてる姿と

時折振り返り俺を憐みしている視線を感じても能天気に俺の勘違いだろうと思うようにしたが
日本の総人口* が一世紀を経て大台を割って久しく俺の曽祖父が言っていたマスコミ関係者の
(*2065年 8808万人)

選民意識が今の時代で更に増していると思っている。

-つづく-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)


-つづき-

■サイン ください

御配達使者様が到着時刻の15時に近づく頃には既に年に一度いや初の光景を目に焼き付けよう
慶事を聞きつけた付近住民たちも含めて閑静な住宅が建ち並ぶ一般庶民地区にしては賑わい始め

普段なら無人自動運転トラック乗客を乗せた無人自動運転タクシーが行き交う環七通りからの
迂回路として利用もされている車道は交通規制が既に始まているのか見かけなくなり代わりに人混み

を整理するAI ロボットポリス(しきり君)が多数現れローラー歩行時の発生音を響かせながら稼働する
のを見て儀式開始が迫ることを実感し儀式の意義と所作を事前に日本国政府関係者から教示されて

いる相原聡であった。

一区画先の二丁目との境界となる住居ブロック塀越しから蹄の音が聞こえてくると相原聡宅周辺に
集う面々の会話も止み静寂に包まれると陽光を浴び濃い紅色が映える儀装馬車(着任した外国大使

が信任状捧呈式のため使用する)を模した馬車(手動技能最高運転士が手綱を操る)が姿を現すと

俺は玄関前に立ち道路中央まで敷かれた赤絨毯を臨み横付けされる馬車の
到着を早やる気持ちを抑えて御配達使者様を待った。

濃い紅色が映える馬車が道路中央まで敷かれた赤絨毯の先に横付けされると何処からともなく
雅楽の調べが聞こえ始め馬車の扉が開き御配達使者様が中から姿を現し降り立った。

ソンセンニム サマ
俺は唱えると正座してから頭を垂れたまま両肘で両脇を閉め両てのひらを上にして左右側頭部に

添えたまま再度深く頭を垂れ
ソンセンニム サマ

再度唱えて最高の受領姿を示してから解除し立ち上がる。

俺は初めて生で見る御配達使者様を纏う凛々しき着衣に目を奪われ素直に
「最高です!」

と予定外の声を発してしまったが周囲から どよめきが起こると賛同の拍手も得られたようで安心した。

今や貴重な衣装となり見かけることも無くなり専門機関で代々丁寧に修理保管され受け継がれてきた
御配達使者様を纏う着衣は所々に薄くなった油染みが点在する白色の衣装は21世紀初頭までは

作業服【つなぎ】と呼ばれている衣服であった。
赤絨毯を小脇に段ボール箱を抱え力強く歩き近づき遂に俺と対面すると御配達使者様は お言葉を発した

サイン ください

-つづく-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)


-つづき-

■face to face

御配達使者様のお言葉に反応し相原聡の前面右側空間に突如現れた3Dホログラフィー機(拇印君)
向かって宅配品受取の証として俺は右手親指を突き立て指紋を付けた。

「操作 指紋 認証 確認 いたしました」
と発しながら3Dホログラフィー機(拇印君)は縮小し空間に吸い込まれて行く。

俺は自称 宅配当選マニアの一人だと思っている 日本が世界に誇れる物流システムの権化が
人的交流物流システム「宅配便」なのである。

21世紀初頭には宅配量の膨大に反比例するように配達員の人員確保が儘ならず宅配サービス見直し
が宅配業界大手の宣言により他社も続き運賃も値上げされ利用者も宅配享受の再確認の機会とも

なったが根本的な「宅配便」を担う配達員の減少傾向は日本の人口減少と付随して進むのである。

俺の曽祖父は でもしか先生 だったと父親から聞かされていた デモしかしない と言う意味ではない
魅力的な就職先の採用には自信がないが教員でもと採用され積極的な就職活動の面倒を避ける

ために公立校教員となった。そして祖父は親の背中を追うことなく治安維持の最前線 社会正義の
守護者として警察官の道へ。教員 警官と続いた家系で父は公務員系の重圧に負けてしまったのか

民間食品会社正社員(事務職)へと進み俺には何度も平凡な人生が一番だ でも正社員になれと言う
口癖に俺は閉口する。

俺は誰もが正社員だった時代は知らないが人件費抑制から来る非正規雇用の弊害は確実に労働者
に疲弊を与え未来の展望が開かれない社会となっていると21世紀初頭から叫ばれていたのに当時の

労働者の意識の一片に気ままに働き束縛されず自由を謳歌しても働く場は有ると思う若者も居たこと
は事実だったと思っている。

俺の持っている電子辞書の21世紀初頭項には 3K (きつい汚い危険) 新3K (給与休暇希望)と綴られ
働き方の改革として挙げられている。当時の経済状況は不況から好景気の端境期で就職難の時に

門戸が大きく開かれていた人的サービス業で高齢者増加による介護士・ヘルパーや接客サービスの
飲食系そして物流サービスの貨物・宅配運転手へ薄給でも糧を得るために不承ながら就く者も

大勢いて当時と違うのは俺の今の時代は人的サービス者の社会的地位は高い
と認識されているのは人口減を補うかのように人的から機械的に単純労働*は置き換えられていた中
(*製造現場に止まらず高度な判断作業と思われた証券業界でもトレーダー・ストラテジスト等はAI が担う) 

富裕層は見栄を競うように大金を払ってでも人的交流物流システム「宅配便」を利用することになり
日本国政府は健全な人的交流物流の保護として貧富を問わず宅配サービスの受領者を政府所管の抽選制

を施行し末代まで今やface to faceが最高芸として無形民俗伝統芸として人的交流物流システム「宅配便」を映像記録する部署が文化庁無形民俗伝統芸「宅配便」保存課であり俺が当選した慶事も所掌する。

ありがとうございました

と感謝の言葉で俺は御配達使者様から当選した宅配サービスの注文品(日用雑貨)を詰めた段ボール箱を
受取ると無形民俗伝統芸の終幕を告げる祝砲の花火音が手動式打ち上げ花火最高技能士の動作

を経て足立区上空へ解き放たれ西日を浴びて反射する無数の連なる小型無人自動飛行運搬機(ドローン君)
の航路へ届いたかのように各家庭を目指し宅配便(ドローン君)が花火の軌跡を描くように散って行く。

(よし 今度は 御配達使者様 役で当選めざし 応募しよう)
と胸の内で呟く 相原聡 であった。

【資料】 21世紀初頭に於ける手動運転式化石燃料内燃機関を用いる有人宅配車(イメージ図)
201101yubin1.jpg
所蔵 22世紀物流効率化協議会 発行 機関誌【face to faceで最高の笑顔】より(イメージ図)抜粋

-おわり-
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
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テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

S I T 菌

注)SNS系ツール全盛以前のコミュニケーション・ツールとして役割が大きかった頃の
電子掲示板(BBS)観察から創作。

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俺が書き込んでいる掲示板の主は女性管理者だ
俺の他も男ばかりでスレの立てあい、主からのレス待ち行列だよ

もちろん、他の書き込み者とは交流なんてない

たまに主がスレ〆レスしたのに「レス感謝で~す」ってレスして
レス待ち行列のなか既スレをスレ上げする板マナーを守らない奴がいると

ぎゃ~と、俺様含め男の野太い悲鳴が掲示板から聞こえて来て、
俺の脳にも突き刺さるんだ、苦しい~。

ふぅ~ん、アンタ、の板も観てみたいけど
アタイが観ている掲示板は管理者が闘病のためレス書き止めたのに

常連書き込み者のワイガヤ状態で他所からも呼んで掲示板を占拠されてしまい
オフ会スレも定期的に立ち 結果報告スレも立っているのよ、管理者を忘れて

そう、アタイが管理者だけどね、掲示板廃止できなくて心がシクシク痛むのよ。


なぁるほど、ふんふん、最後は私の番かな
私が その板に書きこむのは新年の挨拶に~

そうね~年内に非日常の出来事が起きた時で昨年は二度書いたわ~

でね~そんな私を尻目に、ダメ、私の尻を見ないで~
そんで~、その板に書きこむ親爺、なんだっけ~ ブロ、BLOグ~

に書き込むような事を毎日、その板に書きこむのを見るのよ、見るだけね~
BLOG 持てば良いのに、って思うわけ、でも、親爺がBlog 持っても見に行けないのよ

その親爺が私だから、訳が分からないのよ~。

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病室内の各ベッドに、うめき声の三人が横たわっている
頭に被せたヘッドギアから伸びる通信回線が各ベッドの

上に置かれたモニターに繋がり今、彼らが脳内で見ているであろう状況を神経伝達物質の
放出模様がサイケ調に可視化され拡散収縮を繰り返しながら映し出されている。
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「先生、如何ですか 患者の容態は」と問う厚生省免疫技官に

「君、わしは長年細菌学をやって来たがパソコンの掲示板から
人間の脳内に危害を及ぼす細菌が発見されたことは驚きだよ

対処の手はまだないが感染しない特効薬としてなら【パソコンの電源を落とすことじゃな
で、命名は「掲示板ヒト型細菌」とし略称は「掲示板菌」じゃな」

「先生、でも僭越ながら見方を変えれば提唱され仮説扱いの所謂「嫉妬菌」の発見なら
「ヒッグス粒子」提唱と並ぶノーベル賞級じゃないですか、分析結果を待ちたいものですね」
(研究室時代に俺が理論から導いて存在を提唱したのに指導教授のお前が横取りしたくせに)

「そうじゃな 彼は提唱しただけでノーベル賞じゃが分野が違えど わしは提唱かつ発見で大きさ
だけなら「嫉妬菌」は「ヒッグス粒子」の倍以上の大きい菌じゃから わしの方が本当は偉大なんじゃ」 

病室を隔てた観察室内に居た教授と技官も既に「嫉妬菌」感染し脳内に嫉妬が 巻いていた。

■「嫉妬菌」の存在が人類の進歩を促したとも■

(フィクションであり実在の組織人物、掲示板とは無関係です)

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

[ロマンス 時を越えて]もう一枚のセピア色の写真

私は1997年 4月のGWを利用し神戸港を出航して
上海港を目指す「新鑑真号」に乗船することにした。
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乗船者が案内されて操舵室で船長の挨拶を受けたりして船内施設の
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見学を一通り終えて二等室 洋式( 二段ベットが四組の八人部屋 )の
船内住人の一人として、これから48時間の船旅を過ごす事になった。

早朝の旅立ちと初めて中国大陸に上陸できる高揚感から下段ベットに
休憩のため身体を横たえた時には眠れるとは思わなかったが身体に

心地良い少ない揺れを感じていたら、いつしか深い眠りに落ちていた。


沢村健の場合

セピア色の写真
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陽当たりの良い日には
陽が射す窓辺で椅子に腰掛ける祖母

90歳を越えて顔には皺が広がり
若い頃は「これでも」と自慢し歯が無い口を広げ

笑う祖母は今は椅子に腰掛け居眠りをしている

膝掛け毛布に手を置き指先に握られている一枚の写真
既にセピア色となり手に触れる部分は更に色合いが薄くなっている

大切にして何時も見つめているセピア色となった写真

目が覚めたのか気付いて私を呼び
近づく私にセピア色となった写真を見せ話す祖母

「新京に住んでいた頃は楽しかった~」

写真にはブロック塀に囲まれアカシアの木々が茂る洋風住宅が写っているが
住んで居た頃は幼子だったと祖母から聞かされた父にも記憶がないようだ

中国(長春)大陸から身一つで幼子と苦労の末に日本に帰り着いた祖母

老いると華やかだった頃が脳裏に浮かび口にするのか
「あの家はどうなったかね~」

「そうだね、見て来てあげるよ」
祖母の手を取り膝掛け毛布に戻す私は

幾度と聞かされた祖母の想い出話に興味が出て

神戸港から出航する上海行きフェリーの甲板で
祖母の願いを叶えるべき一枚の写真をポケットから取り出す

私の手には祖母から渡された

初めて見るセピア色となった写真には住宅の前で若かりし日の
祖母と並んで写っている軍服らしき姿が「にじんで」見え

風向きが変わり近くで妙齢の女性の短い悲鳴が聞こえて
危うく風に吹き飛ばされようとした写真を慌ててポケットにしまうと

出航を知らせる銅鑼の音が聞こえ
妙齢の女性の手元から離れた送迎テープが

塊りとなって波止場に落ちて行くのを
見送る妙齢の女性の横顔に釘付けとなっていた。

「もう一枚のセピア色の写真」続く・・・


秋月京子の場合

セピア色に染まったアカシア
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「おじいちゃん、又来るね」
孫娘の明るい返事に頷いた「秋月徳兵」は

窓に近づけば横須賀港などを見渡すことができる
塚山公園に近い特養老人ホームのベッドに横たわっていた

戦後の抑留生活で病んだ体が祟ったのか今では歩行も困難になりつつあり

老い先短いと悟っている「秋月徳兵」は
今でも大切にしている写真をベッド横の抽斗奥深くに置いていたが

先ほど様子を見に来た孫娘に渡していた写真を見なくても脳裏に
浮かぶ当時の嬉しい光景も思い浮かべることができた

樺太の陸軍第八十八師団から南満州鉄道株式会社(満鉄)調査部へ出向いていた
「秋月徳兵」はアカシアが咲き揃う満州の地が気に入った訳は他にもあった

新京放送局に勤めていた「浜崎春子」とは関東軍参謀の歓迎の宴で
満鉄調査部調査課長の紹介で知り合い将来を誓う間柄になる予感が

してグラスに余分な力がかかり乾杯してしまった

「浜崎春子」は帝都の女学校を卒業すると父が興した商事会社に勤めることなく
同じ満州の地で放送局の臨時事務員として勤めていたが縁談を急がす

父に逆らえず今宵の関東軍参謀の歓迎の宴に出席して陸軍少尉「秋月徳兵」の
凛々しい姿を伏せ目がちで見ていた

「おじいちゃん、行くことにしたよ~」

想いに慕っていた「秋月徳兵」を覚めさす孫娘の明るい声が聞こえて
視線を孫娘に向けて微笑んだ

「もう一枚のセピア色の写真」続く・・・


祖父から渡された一枚の写真を見た時
今ではセピア色に染まったアカシアを見てみたいと思い

場所は分からなかったが祖父から戦前の満州・新京だと教えられ
何故か胸焦がす想いが写真に写る直立不動の

若い頃の祖父と並んで写る和服の女性は
指で永年擦られ磨耗で見え難くなっている

「秋月京子」は家事手伝いと言う名目で父親と同居しているので
一人残して祖父の「アカシアを見てみたい」との願いを叶うべく

中国の地へ赴くのには抵抗があったが
父から意外な言葉が発せられていた

「アカシアを見て来ても良いぞ」

父は樺太・豊原で生まれたと聞いていた「秋月京子」は
父からも樺太のアカシア並木を聞かされて育っていた

戦前は大連経由の「日満連絡船」利用が多く
距離的に近い日本海横断航路で敦賀や新潟から

朝鮮半島北部羅津港に着くと列車で行く新京ルートも
利用されていたのが分かった「秋月京子」だったが


現在は神戸港から出航する上海行きフェリー「新鑑真号」の甲板で
時間的余裕のある「秋月京子」は男友達に暫く留守にするとのみ

携帯電話で告げ祖父から渡された「セピア色に染まったアカシア」の
住宅を探して画像として撮って来る願いを叶うべく戦前に祖父が大陸へ

渡った海に時間を隔て祖父の足跡を辿りたいと思っていた

もう出航間近で船員さんから手渡された送迎テープを投げる準備をする
乗船客を見ていたら風向きが変わったのか浅く被った帽子が風に飛ばされ

そうになったので思わず声を上げ慌てて両手で帽子を押さえようとして
手に持っていた送迎テープが塊りとなって見送り者で混む波止場へ

落ちて行くのを見送った「秋月京子」の横顔に温かい視線で釘付けとなった
乗船客が居たことを知る由も無かった。

「もう一枚のセピア色の写真」続く・・・
フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。



スクロール 感謝致します。
また しばらく 冬眠させて頂きます 再開後には訪問させて頂きます。
:*

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

有ったら 良いな Ver2

 
■夢のような体重計

遂に悩める貴方へ夢を見させる、
蜃気楼のような素敵で華麗に貴方を
変身させるサポートの一環として

お手伝い出来るかも知れない数少ない
叡智が集まった様にも錯覚を受ける

体重計の誕生か

・体重計に乗るのが怖い、貴女
・正確な体重を知りたくない、貴女

に最適の「モザイク付」体重計

準備は簡単、明瞭、即実践

わずか一枚のモザイク用シールを
デジタル表示欄に貼るだけです。
(アナログ系振動針は対応外)

さあ、今日から悩むことなく
ドンドン 乗って下さい。
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ハイ、カット!!
OK OK いいね~

次、購入者の「個人の感想」シーン行くよ!!

坊主(俺のこと)、お嬢さん達、連れて来て

俺は、CM撮りの制作プロの新入り、でも年齢では「ヘッド(主任カメラマン)」よりも
上だが業界内では年齢なんて関係ない、まぁ、どの業界でも同じだろうが・・・。

坊主、お嬢さん達に「個人の感想」の台本渡してあるから
こっちに連れてくる前に確認しろよ!!

背中にヘッドの声を聞きながら俺はスタジオセットを後にした。

もう、二時間ぐらい経ったか
寝付かれず幾度と寝返りの度に横に寝ている「マサミ」の肩に触れた。

「マサミ」とは今日が初ての関係じゃない、今、もう明日になっているのかも
分からず薄暗い六畳間の寝室にいる。

疲れ過ぎて眠れないようだと俺も分かっているが
次の段取りに頭が冴え過ぎているようだ。

「マサミ」とはスタジオから一緒に退出せず別々に、そう、いつもの通り
神宮の森に近い喫茶店で待ち合わせして、業界内の事を教えてもらったり

田舎の親の生活状況なんかについて、世間話をしていた、
メイクのアシスタントなのに俺に先輩風だが致し方ない。

お互い明日への希望なんて、あるようで ない
この都会の片隅で身を寄せ合って生活している奴なんて五万、うん、人口は一千万人
だから、何というのか喩えのことだろうが話を進める。

俺も、この業界の内情なんて詳しくないから
もちろん、これを書いている筆者も詳しくないのは当然だと言い訳が

俺にも聞こえて来そうだが読者も、その辺を配慮して「重箱の隅」を突く 
思いはするだろうが、頼むわ 宜しくね。

なんて、俺は俺で自由に動き回るよ、じゃ 進むよ。
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俺は、CM撮りの制作プロの新入り、制作プロって言ってもCM撮りだけで
ここが成り立っていないことは、俺だって分かっている。

薄利多売なのか次から次へと下請けと手配(くちいれ)に精を出さなければ資金が
回って行かないようだ。

昨夜もCM撮りの目処がたったのか、上司の「たかた」と言っても制作の駒使いは
お前と俺しか居ないが誰に頼まれたのか知らんが評論家のリストを作って来いと

それも百人以上 用意しろ、なんて。

俺が素人なのは分かってるくせに いや、もしかして難癖か
奴、「たかた」の方が先に「マサミ」にモーションを掛けていたのを

「マサミ」本人が俺に教えてくれたので間違いないだろう。

そもそも、評論家なんて何人いるのか知らないし、事務所の「タレント年鑑」を
拝借して見ても「評論家」の項目なんて ないよ(注 要出典)

「たかた」の仕入れた話によると、まだ具体化されていない企画段階だが
来年の新年早々に特別番組として

■ 大 評論家 祭り 我が国の行く末を占う

専門家・研究家・批評家・評論家・その道の大家 100人大集合
新年早々、大激論、口泡飛ばし、あわや播磨投げか、スタジオ大激突

とか、どうせ進行は台本どおり でしょうが。

おっと~、読者諸君、まだ企画段階だから 他のテレビ局やネットに流すなよ
真似されたら 俺の立場がないからな といっても まだ新入りだがね。

でも、同じようなテレビ番組を見たことが、あるんですけど「たかた」君。

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「マサミ」が家に戻って出社すると言って俺のアパートから出て行くと薄明かりの寝室に
明かりをつけてノートPCを掛け布団の上に乗せて頭に浮かんだ「評論家」を資料に

打ち込み264人目を入力し一休み、そして最後の一人「明るい農村評論家」を追加し
265人を列挙すると出社するため急いで身支度を整えノートPCを抱えて電車に乗った。

出社すると「マサミ」の服装が昨夜と変わっていたが挨拶もそこそこにしてメイク係りと
一緒に出掛けて行った。

入れ替わるように「たかた」君が俺の隣の席に来たので早速、ノートPCの資料を
見せるため電源を入れ一声掛けた。

『評論家リスト 見てくれますか』

ノートPCの 資評論家一覧を見た「たかた」君が

『なんじゃこれ~ 』
某有名俳優のセリフを真似したような声を発した。

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■評論家一覧

アイスクリーム評論家 アイシャドー研究家 アイマスク専門家 あきすとぜねこ研究家 飴玉研究家
相合傘研究家 入母屋研究家 囲炉で四方山話研究家 胃カメラ愛好家 インターネット評論家 

イベント評論家 医療ジャーナリスト 上を向いて歩けるか研究家 占い師批評家 ウイルス専門家 
馬跳び研究家 歌番組研究家 馬の耳に念仏研究家 江戸前研究家 園芸専門家 演芸評論家 

絵文字研究家 エアゾール専門家 エンディングプラン研究家 おたく評論家 お宅拝見間取り研究家 
オークション評論家 おやじギャグ専門家 温泉評論家 おせち文化研究家 家政婦派遣問題専門家

火星征服研究家 カメラ評論家 株式相場研究家 漢字文化研究家 カジノ評論家 環境開発問題専門家
亀甲縛り研究家 キャンプファイヤー評論家 キャラクター評論家 共同購入サイト研究家 北朝鮮観察家

軍事問題専門家 クリスマス専門家 くちこみ研究家 串かつ研究家 クイズ問題研究家 
クアハウス専門家 原発問題専門家 けんけんパー研究家 携帯電話評論家 掲示板研究家 

経済ジャーナリスト けん玉研究家 高額紙幣研究家 工場見学愛好家 婚活専門家 恋人の鐘研究家 
コマーシャル評論家 航空評論家 桜見物場所取り研究家 三輪車研究家 財界研究家 サバンナ評論家 
差し迫った問題専門家 サンセットクルーズ研究家 女子高生は良い香り研究家 女子アナウンサー研究家 

就活専門家 情報弱者研究家 地団駄研究家 神社仏閣評論家 水晶研究家 鮨専門家 
スーパーマーケット専門家 スタンガン専門家 スワンボート研究家 スイーツ研究家 

セクシャルハラスメント専門家 セクシードレス研究家 政界研究家 千人切研究家 線香研究家 
千社札研究家 制服研究家 ソバ打ち棒研究家

葬儀専門家 ソーシャルネットワーク評論家 粗品愛好家 袖の下研究家 宝くじ研究家 
竹コプター研究家 ダイエット評論家 達磨さんが転んだ研究家 タンス担ぎ研究家 

ため池研究家 地下経済評論家 違う意味で二輪車研究家 地図専門家 チーズ研究家 塵研究家 
チタン専門家 通販評論家 辻説法評論家 津波問題専門家 ツーと言えばカー専門家 綱引き研究家 

杖専門家 鉄道評論家 電飾研究家 T字剃刀研究家 てんてんこ舞研究家 出前専門店評論家
手抜き料理研究家 童話批評家 撮り鉄研究家 丼物評論家 トイレットペーパー評論家 道祖神研究家

飛び地研究家 納豆研究家 中吊広告研究家 縄跳び研究家 泣き虫研究家 何気ない一言研究家
内緒話研究家 人気者評論家 偽札問題専門家 二輪車問題専門家 二人三脚走研究家

ニヒリズム文化評論家 にがり研究家 塗り絵評論家 縫い針専門家 糠みそ文化評論家 
抜け毛予防専門家 布研究家 縫いぐるみ研究家 熱帯魚評論家 練馬大根専門家 

ネイルアート研究家 ネアンデルタール人研究家 猫評論家 ねじスパナ専門家 海苔弁当研究家 
ノート(帳面)専門家 ノイズ雑音除去専門家 鋸専門家 ノンアルコール専門家 糊専門家 

発車お~らい研究家 廃屋廃道研究家 敗戦国日本から復活評論家 パンスト研究家 犯罪防止専門家 
パチンコ評論家 人の振り見て我が振り直せ評論家 雛壇芸人評論家 人の道道標専門家 ピザ評論家 

ビザ研究家 ビニール袋専門家 ブログ評論家 文芸評論家 プロバイダー評論家 ブライダル専門家
夫婦生活評論家 フィットネスケア専門家 ヘリコプター評論家 ベル研究家 平和運動評論家
ベーカリー研究家 屁理屈研究家 屁の河童研究家
放送文化評論家 ホテル評論家 ポイント獲得評論家 某巨大掲示板研究家 盆栽批評家 ホイッスル研究家
漫画評論家 マンホール専門家 饅頭評論家 マニフェスト選挙研究家 マイレージ研究家 マンツーマン体操専門家
見つからない居眠り研究家 耳障りな言葉専門家 見せパン揚げパン研究家 ミイラ取りがミイラ研究家
ミミズ一万匹研究家 巫女専門家
昔話研究家 無事故無違反推進専門家 虫眼鏡専門家 虫評論家 無料情報評論家 無理難題問題専門家
メモリー研究家 メタボ専門家 メランコリー専門家 目出し帽専門家 めがね評論家 メダル研究家
餅研究家 モチベーション専門家 モータースポーツ評論家 モニュメント評論家 モーター専門家 文殊の知恵研究家
ライジングサン研究家 ランキングサイト評論家 ラーメン評論家 ランニング評論家 ライター火打石研究家 ラジオ受信機専門家
リラクゼーション評論家 リーゼント研究家 旅行ジャーナリスト 留学問題評論家 リクエストはがき研究家 リサイクル問題専門家
ルーレット専門家 留守番研究家 ルート二乗研究家 ルックスが一番研究家 ルーキー評論家 ルーチン業務問題専門家
恋愛問題専門家 レンタル専門家 レコードCD文化評論家 レア物評論家 冷房設備専門家 レスリング評論家
ロボット開発専門家 ロン毛専門家 ろうそく専門家 ロックバンド評論家 ロカビリー研究家 路上駐車問題専門家
焼き餅文化評論家 焼きソバ研究家 やかん鍋文化研究家 やせ薬評論家 やらせ問題専門家 ヤツメウナギ専門家
ゆかた浴衣評論家 ゆかた浴衣の帯専門家 ゆで卵研究家 油田探査専門家 輸血問題専門家 遊園地評論家
横文字文化評論家 ヨット評論家 よこれんぼ評論家 与太話研究家 酔っ払い文化評論家 世渡り上手専門家
わかめ文化評論家 ワンダーフォーゲル専門家 若鶏専門家 渡し舟専門家 わら人形文化評論家 ワイン評論家

明るい農村評論家


行間が不統一に表示された文字を見て 俺は 思った 「たかた」君も 同じ思いだろう。
「文字出力表示補正ソフト(アプリ)が欲しい」
-----------------------------------------------------------------------------------------

<つづく>
■夢を叶える階段

テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

いつまでも 心に原子炉を

老い先が短い俺が生れる前から溶けずに居る 雪だるま の見送りを受け最後の気力でアジト前に立った。
2011snow.jpg

地球温暖化じゃ ないのかよ

符牒替わりの挨拶をしてドアを開けてもらうと簡易型原子炉の恩恵を受けた室内は外では見えなくなった
太陽に代わって室内用原子力太陽光を浴びて暖かく既に演壇前には薄着姿の仲間が待っていた。

「われわれ反帝国主義 反スタ 反中央集権 反権力 反地球温暖化・・・あと なんだっけ ハクション !! 」

「おい 温度差かよ しっかりしろ ウラン懐炉 ふところ から出したか」
「永遠の青年はチベット高原を目指せ そこは暖かいぞ」

仲間の野次と声援を続けて受け脱衣し褌一丁になって背筋を伸ばすと室内用原子力太陽光により
額から汗を垂らし汗ばむ手でマイクを握り演壇に立つこと幾千回 、ついに今宵を持って降壇を迎えた。

「万年議長に 皆様 最後の声援を お願いします」
ビキニ姿の女性司会者の言葉を受け俺は最後の力を絞り

「今 ここに 地球温暖化税阻止革命を継ぐ 第四世代の 若者を紹介したい 諸君 我が革命に力を !!」

言い終えた俺は演壇横の汗溜まりに足を滑らせパイプ椅子に崩れ落ちるように座るとビキニ姿の
女性司会者が若者の登壇を促していた。

「それでは 皆様 今宵 初めて登壇する全国幼稚園児共闘会議 相原 聡 議長を紹介します !!」
室内用原子力太陽光を浴びた半裸の若者は しっかりとした足取りで床の汗溜まりを避けマイクの前で言った

「造反有理 左うちわ では 暖風は吹きましぇ~ん」

俺は意識が薄れて行くのを感じながら なんたる真を突くテーゼだ 
まずは うちわ で風をおこす事が革命に繋がる  さすが 我が ひ孫・・・。

百年前から始まった地球温暖化対策の成果により今度は地球が寒冷化し厳寒の冬が年中光景となってしまい 
誰も 「地球温暖化じゃ ないのかよ 」と言えない世界になっていた。

それは「地球温暖化税基本通達の取扱いについて」が特定秘密保護法により特定秘密に指定されていた事が
施行後に判明し「地球温暖化」文字自体が秘密で国民は知らない言葉となり使用不可になっていた。

*一度 施行された地球温暖化税は廃止されることなく間接税として国民の知らぬ間に徴収され続けている
                                                           --おわり--

参考に) 「地球温暖化対策のための課税の特例」について : 財務省

テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

愛がない公園

今日も男女のカップルが挑戦・・・と公園に踏み込んだ。
Park.jpg

小雨が止み○●○●傘を男が閉じると直ぐに濡れたベンチをタオルで拭き女を座らせて
「子さん 今日も楽しかったよ」

○●子の横に座った○キオに頷きながら
「キオさん 私もよ」

○キオは○●子の手を取って 顔を見詰め
「してるよ」
「キオさん 私も してるわ」

心は通じるが○キオは祖父から教えてもらった ○●を唱えられた過去を明日からでも復活と
「どこでも ○● を唱えられる運動」を起こそうと決め○●子を抱きしめる間もなく

素早く身体を起こすと○●子の手を取りベンチから立ち去った。

立ち去ったカップルの発言・行動を監視する「○●がな●公園 監視団」の面々は満足そうに頷き

「やっぱり この公園のルールでは カップルも我を忘れる事もなかったね 良し良し」
と団長が発言した。

副団長は覗●て●た望遠鏡を仕舞●ながら
「これで我が市の健全度も向上し結構なことですね 禁止事項を市の全てに適用ですね」

「恵まれ過ぎですよ崇高な を軽々しく使うなんて わしらの歳になったら も不要でね フヒハヒ」
○わな●●れ歯と格闘し団長補佐が屈み込んで●た腰を伸ばしながら集音機器を持ち身体を起こした。

公園の通知板には禁止事項として

・市立○●がな●公園では ○または●を発音することは禁止です。
・市立○●がな●公園の様子を文字化する時でも ○または●の発音使用は禁止
 止むを得ず○または●の使用時には○または●を伏字とします。

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

(1) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)

*一部加筆修正し画像差替えて(13)まで再掲しています(記事連作のため上から下へスクロールとなります)

落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

gan1.jpg

◆2003年11月22日AM6:00◆巌門

能登金剛国定公園を代表する景勝地・巌門は海食崖がよく発達して
いる。松本清張「ゼロの焦点」が刊行されてから断崖絶壁を訪れる

観光客は増えたが昔から住む「多田清吾」は愛犬「シロ」と、まだ
日の出前の暗い坂道を「レストラン巌門」までの散歩を決まった時間
、積雪の1月,2月を除き日課としていた。

日本海から吹き荒ぶ風は夏場は気持ち良く感じるが今日は霙交じりの
横風で「シロ」を繋ぐ綱におのずと力を入れ一歩一歩確かな足取りで

注意して坂道を下る。冬場は車両の通行も疎らになり今も目線の先、
「レストラン巌門」から来る車のヘッドライトの灯りも見えなかった

『シロ、休憩しようか』
先へ先へと進む「シロ」に声を掛けた。

老妻に先立たれてからは既に2代目「シロ」である。
共に老いたる者としての連帯感と愛情を「シロ」に注ぐ「多田清吾」であった。

「レストラン巌門」駐車場で休憩して来た道を戻る「多田清吾」に
とって、夏場は長めにベンチに座って道路を通過する車やバイク、

まれに野宿する若者を眺めるのが人恋しくなる時の慰めであったが

今日は「シロ」に声を掛けて戻ろうとした時、焼きイカの店舗の陰に
佇む赤っぽいコートを着た女性と視線が合った気がして思わず声を発した。

-つづく-

★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

(2) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)

前頁から

落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

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◆2003年11月22日AM6:30◆能登地区病院

『恵子!!』
呼び声と同時に駐車場に崩れ落ちたように座った赤いコートの女性の元に駆け寄りながらも
「多田清吾」は娘と違うことが分っていた。「シロ」が傍らに佇み匂いを嗅ぐ仕種が横目で見えた。

能登地区病院の内科医「奥村幸雄」は当直明けから日勤医に引継ぐ時間も迫った頃
時間外患者の来院を時間外受付の職員から呼び出しを受けて

当直室から出て朝日が窓口から射し込む渡り廊下を歩きながら、この時季としては珍しく
穏やかな天候になると思った。既に院内の清掃を行う職員や売店に荷物を運び入れる
姿を見て活気が戻りつつある院内を通り別館の時間外診察室に入った。

職業柄から困った表情を顔に現わさない看護師達だが眼の前に立ってカルテを差し出す
「小杉真理子」の顔には明らかに困惑の表情が読み取れた。

内科医「奥村幸雄」は差し出されたカルテの患者名が空白なのに気づいて
『年齢欄もか・・・。 保証人は大丈夫なの』
数年前なら吐けないセリフだった。

県都の大学病院で医局勤めをしながら市内の大手企業診療所へ非常勤医師として勤務し
薄給だが何とか口糊を凌ぐこと幾年も経過し教授から能登地区病院へ代わりの派遣医を勧められ
たのはステップアップとして快く引き受けていた。

場所柄か「ヤセの断崖」から日本海に飛び込んだと思われる水死体を監察医の助手として
身元不詳者の司法解剖に立ち会った事も幾度か経験していた。

さらに幸いにも命を取り留めた患者へ励ましたことも。

今朝も身元不詳の患者が救急車で運び込まれてきたが体温は高めで体に抵抗力を増す点滴を施し
様子を見ることを看護師に指示し事務長の出勤を待って診療費について協議をすることにした。

時間外診察室の待合室に座っていた初老の男性は多田と名乗り尋ねてきた。
『先生、体の塩梅は・・』

『すこし熱があるようですが若いですから大丈夫、回復しますよ』
内科医「奥村幸雄」は事務長から強く念押しされている事項を確認する意味で聞いた。

『患者さんとは面識がないとのことですが』
内科医「奥村幸雄」は朴訥な能登人を漂わせる多田に尋ねた。

『ほうや、今朝、散歩していたら・・さっき、看護婦さんに言ったとおりや』
『そうですか、申し訳ありませんが診療費について事務長と協議しますので

今般の経緯について話して頂きたいので、そちらの応接室で待って頂けますか』
『ほうか、分かったよ』
これも何かの縁やと「清吾」は思い医師の指し示す方向に見える応接室に待つことにした。

内科医「奥村幸雄」は多田の後姿を見送り、まだ意識の醒めない患者の様子が気になり
時間外診察室に戻ることにした。

時間外診察室のベッドに屈む看護師「小杉真理子」は「奥村幸雄」に気付くと
『先生、患者さんの意識が回復しましたが・・・』

「奥村幸雄」は看護師とベッドを挟んで患者に声をかけた。
『具合は如何ですか』

顔面が薄っすらと赤みがかり発熱で体温が高めと見て取れる患者の口から
『ワタシ、ワ、ダレ・・・』

患者の視線を受けた「奥村幸雄」は看護師「小杉真理子」とも視線が合った。

まだ暖房が入っていないのか冷え冷えとした応接セットのソファーに座ると
目線は自ずと壁に貼られた魚拓が「小振りの石鯛」なのに

これ見よがしに飾られているのが病院事務長「塩谷一夫」らしいと「清吾」は思った。
待つほど程なくノックがあり医師に続いて、「塩谷一夫」が後から入って来た。

『よお~多田さん、ご無沙汰。えらいベッピンさんを紹介してもらい、ありがとうな』
これからまだまだ寒くなると言うのに赤茶けた顔と節々の太い手には扇子が握られ

汗ばむ顔面を扇ぎながら内科医「奥村幸雄」へも声をかけた。

『ほな、先生、保険証も無い身元不詳者として役場の社会福祉課に診療費給付申請しますよ。』
尋ねられた内科医「奥村幸雄」は頷いた。

『身元不詳者・・・』思わず「清吾」は声を発した。
『そうや』と憮然とした顔で「塩谷一夫」は視線を医師に向けた。

内科医「奥村幸雄」は事前に病院事務長に診断結果を打ち明けていた。
『多田さん 患者さんは自分の氏名が分からないようです
所謂、記憶喪失には数日で思い出す一過性健忘もありますし』

驚いた「清吾」は『先生、記憶喪失の原因ってなんやろ』

『基本的には三パターンで、物理的ショックや逃避として自分を封じ込める、
また他人から記憶操作を受ける』

内科医「奥村幸雄」は専門外だが知識として述べていた。

『心配せんといいよ幸いベッドも空いたしな』
病院事務長は行旅病人及行旅死亡人取扱法により診療費の目途もたち

壁に貼られた魚拓に目を細めながら
『それでな、治療の方は様子を見ることにしてな 問題は・・・身元不詳や』

「清吾」は頷き病院事務長の続きを待った。
『多田さんも知っている「高田外冶」に連絡せんとな
それでな、ベッピンさんの身持ちも心配で保証人は誰が良いかな・・・』

と相変わらず顔面を扇ぎながら思いを巡らしている様だった。

後を託した「清吾」は時間外診察室に顔を出し 26年前の同時季に赤いコートを羽織り
忽然と姿を消した娘を今か今かと帰りを待ち侘びていた「清吾」にとって

早朝に遭遇した女性が「恵子」であったらとベッドに横たわり点滴を受ける
妙齢の女性の安らいだ様な寝顔を見つめていると一瞬、口元が微笑んだように見えたが
そっと見守り「記憶がないのか」と心の中で呟いていた。

--つづく--

★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

(3) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)

前頁から

落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

tokyo.jpg

◆2003年11月22日AM6:35◆東京・霞ヶ関

内閣官房庁舎内の内閣情報室の出先として合同庁舎12階にある
内閣情報室分析課の室内の明かりは消えることなく24時間の
即応体制をとっている。

当直責任者である「愛原聡」参事官にとっては気が重い足取りで
皇居から見える日の出を迎えるため窓に進んだ。

警察庁出向組であるキャリア警察官にとって内閣情報室は更に
将来の地位を約束されたポストでもある。おのずと政財界の重鎮

と言われるお歴々の情報も集まるポストでもあって使い方によっては
諸刃の剣にもなる生きた情報であった。

「愛原聡」にとって順風満帆に今の地位にあった訳ではなく、
キャリア警察官ならではの人脈にも翻弄された。与党・民自党が

下野した時、政権を奪取した改進党からは官庁にポストオフの
要求が出され三大官庁と自負する警察庁にとっても時の長官を始めに
複数の幹部が退任させられたのであった。年次を重んずる官吏に

とっては入庁年次順が相手を計るものでもあって逆転のポスト配置は
絶対阻止するものであった。そんな慣行を知ってか知らずか、

「クリーンアップ日本」を公約して国民の支持を集めて政権についた
改進党政府は手始めに官庁のクリーンアップと称して年次を無視した

ポスト配分を行い渋る官吏には解任権行使を匂わせ従わせたので
あった。政権党側のブレーンも官庁に送り込まれていた。

庁内が混乱して職務にも支障が出てくるのを感じた「愛原聡」に
とって頼る綱は郷土の先輩として父親同士も親交のあった民自党
代議士に頼ったことはいたしかたなかったと今でも思っていた。

そんな思いのなか窓からは雨雲の切れ目から陽が射し始めて
外堀通りをジョギングする姿を視線で追い、
一息ついて「愛原聡」は昨晩、代議士秘書から

掛かって来た電話の内容を反芻してから机の専用電話器に配置
された各都道府県警察本部長宛ての直通回線に繋がるボタンを
震える心を抑え慎重に指先を選択してボタンを押した。

壁掛け時計の短針が7時を指していたが長針は霞んで見えなかった。

-つづく-

★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。

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(4) 湯○゙~○゙さんを捜せ(仮題)

(1)  (2)  (3) から続き

落ちこぼれ要人保護課員シリーズ「赤いコート姿の女性」編

ishikn.jpg

◆2003年11月22日AM7:55◆金沢・丸の内 南分室

『えぇ~誰だって~』
10畳ほどの広さの剥き出しのコンクリート壁の室内に反響されて
更に大きな声に聞えて思わず「田所真一」は顔をしかめ

『先輩!! 声がでかいっすよ!!』

先輩と呼ばれた「渡辺達司」は受話器を握ったまま咥えタバコの灰を
乱雑に積まれた書類に隠れそうな灰皿に落そうとしているのを見た

「田所真一」は更に顔をしかめながら成り行きを見守った。

『課長!!いいですか心して聞いて下さいよ!!』
上手くタバコの灰が落ちて気を良くしたのかと思い「田所真一」は

明るく饒舌になって話す「渡辺達司」を安堵の目で眺めた。
『先輩!!その調子で』

二人は県警察本部長直轄の要人保護課で二人しかいない相棒であった。
表向きには警備部警備課に属しているが市内鞍月に移転した本部詰

ではなく移転前から旧県庁舎になった兼六園から近い丸の内南分室内に
居を構えていた。

『指揮命令は警備課長ではなく、本部長なのは御存知でしょう
なぜ、お国入りする郷土の星、松井君の警備から外れるのですか』

なるほど剥きになって声を昂ぶらせる訳が分かったと「田所真一」は

男所帯で乱雑になった炊事場にホットコーヒーを入れるために向った
先輩「渡辺達司」のホットコーヒーを作るためではなく自分のために。

炊事場からでも「渡辺達司」の声は聞えていた。

『何だって!!直々に内閣情報室からの要請だって 本当かよ!!』
壁に耳あり障子に目ありだが平和国家、日本にあって危機管理の
重要性が先の政権から叫ばれていたが現実感に乏しいと「渡辺達司」は思っていた。

電話での叫び声と裏腹に冷静な思いが頭の中で蓄積されて行く。
『で、どうすれば良いんですか課長殿!!』

「田所真一」は自分専用のカップにホットコーヒーを入れて室内に
戻って来ると「渡辺達司」が受話器を置いていた。

『真一君!! 郷土の星、松井君の警備から外れたぞ~』

と終わりの言葉は弱弱しく聞えてきて残念さがにじむように聞えた
「田所真一」はカップに口を付けようとした。

『おい!!真一君 新しい指令が伝達された』
と先までの落ち込みようは何だったんだ~と思う位に弾んだ声を

掛けられ逆に動揺してしまう「田所真一」に更に追い討ちを掛ける
言葉が「渡辺達司」の口から発声られたのであった。

『コードネームは・・湯ば~ばさんを捜せ』
と発するや否や「渡辺達司」は無理やり残り少ないタバコを灰皿に

押し付けて乱れた髪も整える間もなく足早に室内を抜けドアノブに
手をかけて振り向くことなく言った。

『真一君、コーヒーの飲み過ぎは身体に悪いよ!!』
言われた「田所真一」であったがコードネームの方に気をとられ

『ユバ~バサンヲサガセ』と復唱していたが何か呪文を唱える感覚であった。

コードネーム・ユバ~バサンヲサガセ
は、極東アジアの緊張緩和を迎える「ピョンヤンの春」に繋がる

僅かな一歩になることを、その時は知らなかった要人保護課の二人だった。

--つづく--

★フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません。

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KIYO♂

Author:KIYO♂
旅・乗り物・株・創作小説・愛犬 ◆20160607未だに冬眠のため不定期活動。

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